巡礼の旅での京都御苑最大の目的地は仙洞御所でした。仙洞御所の予約を取り、時間があるので京都迎賓館へ。
ここは有料なのよ。

それはどうしようもなく、理由はいくつかありまして、まずはここは本当に各国の首脳をもてなす場でもあるので、警備をする必要がある。すごく厳重ですよ。さらに内部に入れてくれるので「まさか」のことが一切ないわけではない。
見学者は下の地下から行くんだけど、地下はもちろん撮影禁止です。なぜって?そこは地下駐車場だからですよ。
まずは牛車型でお出迎え。そんなに大きなものではありません。

これは花器なんだけど、それなら花くらい飾ろうや(1500円もとっておいて、みすぼらし・・・)って思ったのは公然の秘密。
中に入ると、妙に和洋折衷した上にハイコンテクストな和モダンというやつでした。お金がかかってるのは見りゃわかる。しかし、狙い過ぎかなあ。
各国外交官、特に駐日外交官たちは日本のことをよーくご存知です。しかし、その上の人たち。政治家さんやその下の人たち。彼らの教養と知識は豊かなのだけど、ちょいとばかりハイコンテクストにすぎやしないかなあと。
その人の背景にもよるけれど、「地味」「質素」って思うと思うんだ。(で、そもそもそれを自分で説明できるのかね、我が国のホストになる人たちは)二条城を見た後の私は、金はかかってるけど、地味だなあって思ったもの。「京都なので平安時代の建築様式とちょうどを現代風にアレンジしました」みたいなのでいいと思うのな。
日本画が下絵の綴織りだったかな。

ふっと見れば、蘭陵王のちっちゃなお人形。

これ見てよすごいわー。
蘭陵王というのは、中国の南北朝時代、隋による統一の前の時代ですね、北朝の斉という国の王(皇族)の、高長恭です。勇猛果敢な将軍で、かつ凄まじい美男(というか、優男)で皆が見とれてしまうので、戦場では仮面をつけて戦ったという人。ところが人望が高すぎて妬まれて、死に追い込まれてしまう。こういう「美男」「猛将」「短命」「悲劇的な死」という人は後世いろいろな題材に好まれて、唐代に舞曲になる。
それが日本に伝わって雅楽として今でも残ってます。「源氏物語」でも「若菜下」で玉鬘の息子が「陵王を舞う」シーンがあります。(光源氏こそ似合いそうなんだけど、あの人が舞うのは「青海波」。宰相中将の頃、「紅葉賀」で頭の中将と一緒にやる。)
まだ少年の面影を残すような美男の公達がこの面をつけて舞って、最後に面を外すと紅顔の美青年が現れるというの、いいよねえ。
いいチョイス。「蘭陵王」と書かれた人形なら、東アジアの人ならわかる人はわかるもの。実は、私は見てないけど、近年中国でドラマ化されてヒットしたので、わかる人の人口はぐっと増えていると思う。
しかし、細かいの。本当に、ここはいろんなのが細かった。
このシュッとした飾り金具の美しさ!

この金を貼っていく截金という技法は中国から伝わったけれど日本にしか残っていない、とかさ。
和紙と格子組の天井もきれいよー。

和洋折衷なので、食事は西洋風。もう一間あってそこでは畳の上に座るんだそうな(芸妓さんの演壇も作ってあった)。

グラスはHOYA。ショックは大倉。そしてカトラリーがノリタケなのはいいんだけど(銀メッキ)。あー。そこは銀器にしようよ。みたいな、抜け方。もちろん、この銀メッキのノリタケはすっごく高いんでしょうよ。
個人的にすごく気に入ったのはこれ。舞台が隠してあるんだけどね。

御簾!そしてその奥には几帳!
でも、御所の方にはこういう風に使ってあったわけで。

(京都御所 清涼殿)
こんな感じでもう少し派手に使ってあればなお楽しいのになあ。
他にもね、畳の間の座椅子が漆塗りで蒔絵とか、すっごく細かいの。
池の水面に水滴が落ちているのでわかると思うけれど、珍しく小雨でした。

京都奈良に8泊しましたが、日中に雨が降ったのはこの日だけでした。小雨が降りましたのでねえ、屋根の下に入れてもらって大変ありがたかったのも事実です。実は、雨宿りしに京都迎賓館に入ったようなものでして。
庭園も他のお寺と比べると、すごく地味だし。
この池を見ながら思ったのは、「とはずがたり 」の後宮編最後のシーンで、西園寺家の北山の山荘の池に小舟を浮かべて、作者二条たんが後深草院や亀山院と一緒に乗って和歌を詠んだシーンがあるんです。
ほら、小舟も。

実際に、小舟で舟遊びもできるんですってよ。(海外要人の来賓限定)
微妙にみすぼらしいなあって思っちゃうのがこの渡り廊下だった。

渡り廊下の木は木目もピシッとした、大変高い木を使っているのもわかるのよ。

それに、こういうお遊びもかわいいと思う。
しかし!どうせなら桧皮葺だとかっこよくない?
私が言ってるのはこれよ。

(仁和寺)
ね、これならなおかっこいいでしょ?桧皮葺風の手のかからない何か、とかさ、良くない?もちろんバランスを考えて、迎賓館全体の屋根もそうするとかさ。
現実にはテロ対策その他で難しいけどね。
実は、京都迎賓館は新しい建物で、それまでの京都での外国要人の接待に使っていたのは仙洞御所なんです。確かに、これで警備って結構難しいよねって思う。隠れるところは何かと多いのに、スットントンなんだもの。
さて、京都迎賓館ではいろんな情報は、アプリケーション化されているんです。
うまいなって思った。ハイコンテキストなんだもの、京都の建物って!
ただしかし。
ASUSのタブレットを渡されてこれで見ておりました。音声を動かすとプチプチと音はするのに、動画は音が出ないの。音が出ないのに馬鹿でかいイヤホンがあって大変邪魔でイライラいたしました。
うまいんだか、うまくないんだかわかんないわねー。
京都の神社仏閣はこういうのを取り入れるのが早そう。お寺だね、特に。
一般公開が取りやめになることもあるので、ぜひ先に確認してね。
・京都迎賓館
御苑とそのすぐ近くでのルート。