最近買うのは電子書籍ばっかりになって、それもDMMブックスが季節ごとにやる、割引&ポイント大盤振る舞いのときに買うようになったんだけどさ。学術文庫系に新書多めですが。⇒最近電子書籍はDMMブックスで買ってる。iPad Air 5で読んでる。
2022年年末の、DMMブックスのツイッターキャンペーンで2023ポイントも当選してびっくりよ。

ということで、文庫本になるのを待ってた?「台北プライベートアイ」を買った。(50%ポイント還元されたので、次は何買おうかな)
台湾発、私立探偵小説の新たなる傑作が登場!
監視カメラの網の目をかいくぐり、殺人を続ける犯人の正体は?劇作家で大学教授でもある呉誠(ウ―チェン)は若い頃からパニック障害と鬱病に悩まされてきた。
ある日、日頃の鬱憤が爆発して酒席で出席者全員を辛辣に罵倒してしまう。
恥じ入った呉誠は芝居も教職もなげうって台北の裏路地・臥龍街に隠遁し、私立探偵の看板を掲げることに。
だが、にわか仕立ての素人探偵が台北中を震撼させる猟奇事件・六張犂(リュウチャンリ)連続殺人事件に巻き込まれ、警察から犯人と疑われる羽目に陥る。
呉誠は己の冤罪をはらすため、自分の力で真犯人を見つけ出すことを誓う。
監視カメラが路地の隅々まで設置された台北で次々と殺人を行い、あまつさえ呉誠の自宅にまで密かに侵入する謎のシリアルキラー〈六張犂の殺人鬼〉の正体は?
ダメなおっさんの独白
推理小説のようであり、推理小説ではない。
なんというか、おっさんの独白のくどさというか、頭の中で高速でぐるぐるぐるぐるぐるしてる感じが台北の湿度みたいな感じで面白かった。
訳者は「ハードボイルド」と書いておられるけれど、姉さん的にはちょっと違うかな。説諭的な要素、つまり犯人を説得するような要素がないという点では、ハードボイルドではある。
でも姉さんは「ハードボイルド」というと、精神的肉体的に強靭な主人公(名探偵役)かな…的な。
具体的には、レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ(ロング・グットバイ)」のフィリップ・マーロウ。
映像作品なら「ダーティー・ハリー」の、ハリー・キャラハン。クリント・イーストウッドよ…。
日本の作品なら北方謙三の「ブラディ・ドール」シリーズの川中良一。
マッチョですね。
ここまでマッチョじゃなくても、石田衣良のIWGPの真島誠。
IWGPは多少説諭的な要素が入るっちゃ入る。そのときそのときの時代の要素を取り入れるラノベだから仕方がないかな。しかし、真島誠は精神的に本当にタフ。柳のようなタフさ。
1983年に書かれたブラディ・ドールの川中良一にはアメリカのマッチョがバブル期の日本の静岡県N市に流れ着いた雰囲気があるんだけど、1997年は山一證券破綻の時代。そこに出たIWGPの真島誠の時代は不景気に。真島誠こそ日本のハードボイルドの主人公かなと思ってる。最近追っかけてないけど…。
さて、本作の主人公たる呉誠(ウー・チェン)。あら、真島誠の誠だわ。
この人ったら、自分では中年と思ってるけど、50代かなあ、肉体的には結構ボロボロ。精神的には少年時代からパニック障害を抱えていて、タフさとはかけ離れた存在。
ほんと、ダメなおっさん。
ということで、マッチョな男の出てくるハードボイルド小説だと思うと、ちょっと違う。
事件はあるし、解決もされるんだけど、探偵を始めたのに事件に巻き込まれてて、何もかも、主導権は呉誠にはない。ミューズ?的な林夫人が本作のノイズになるけれど、この人がいないとアリバイが…。
呉誠の独白で、描くのは台北であり、六張犁。
六張犁
舞台の「六張犁」は、台湾大学の東方、信義の南方にある。
住んでいるのは臥龍街。
観光地ではないので、日本人観光客があんまり行くところではないと思う。でも、(臥龍街まで入ってないけど)六張犁には行った。⇒六張犂:適当に入って食べた牛肉麺がうまかった件

住宅街なのよ。
事件の舞台というか、呉誠の住んでいる六張犁は、私が行ったところとは文湖線の反対側かな。
目的は富陽街のお店だったんだけどさ。確かに文湖線の反対側でも、マンションの中に入ってみると、思ってたよりも奥ゆきがあって、鰻の寝床のような感じだった。

清山寶珠というお店です。
書かれた2011年段階で六張犁の建物は築三十年から四十年ということだったけれど、確かに70年代くらいなのかなという雰囲気で、多分エレベーターがない四階建て、五階建ての、その上に屋上屋(違法建築)があったりなかったりと言う感じ。
呉誠の住んでいた臥龍街まで行ってないから、台大から臥龍街まで行くと葬儀グッズの…というのはよくわかんない。
想像していたのはむしろ台北駅の北側、華陰街の問屋街の、なんか暗い感じとか。
あの暗い感じはなかなか私の腕では写真に表現できなくて、姉さんの手元の写真にある、「通りの暗さ」が一番近い写真は、華陰街よりももうちょっと北側にある、太原路の路地の日星鋳字行周辺だなあ。⇒日星鋳字行

こっちは道幅も狭く、呉誠の言う所の「古い台北」かな。こっちは住宅地とよりも商業地の上に住宅がある感じ。
そんなことを思いながら読んでた。
だめなおっさんの独白の、合間から、台北の湿度を感じるわけです。
富錦街
呉誠の母親が住んでいる民生社区までは行ってないけど、本文中に富錦街は出てきたよね。
光復北路を北上して富錦街に入り、途中の軍の施設は、北上して民権東路に入りまた南下することで避けたのね。帰りは富錦街からふらふら西へ行ったり南へ行ったりして民生東路を西に行った。
ラウンドアバウトは見た記憶がないから民生社区まで入ってないのね。
こっちは六張犁よりももうちょっと高そうなエリアです。確かにやり手だっただろう呉誠のお母さんが住んでそうだ。

奥の街路樹のトンネルの奥から桂綸鎂が自転車に乗って来そうではある。
(30度近い日だったから)上海や広州を思い出したんだけどさ。
コーヒーも飲めないから入るところもなかったんだけど、デザイン事務所や建築事務所、弁護士事務所もあったかな。私家房(プライベートレストラン)っぽい感じのところがあったり。
しかし、これはこれで、やっぱりエレベーターなしの五階建ての上に違法建築がある感じよ。
この違法建築こそが台北という街の味なことは事実だけど、日本同様に高齢化の進む台湾では、足が悪くなるとエレベーターがないと大変よね。居住経験としてはあんまりよろしくなさげ。でもこのボロビルが億ションなんだよ。中は結構豪華にしてあるのではないかなあ。
三年ぶりの台北は、(中山の)赤峰街みたいな、夜間になってからの方がお店が開きそうなところは別としても、たまたま休業(時間とか、お休みの日)なのか、閉店してるのかいまいちよくわかんないところがあった。あんまり景気が良くないんだろうなというのは、信義のBreezeですら、空き店舗が多く。しかしそういうときには、同時に再開発も進んでた。

南京復興駅から。復興北路だから元々の建物も、富錦街みたいな違法建築というわけではなさげだけどね。
台北の違法建築も徐々に姿を消していくのではないかなと思ってる。
(建物、特に古い建築物を見るのは好きだけど、古けりゃなんでもいいわけじゃないんだよ。)
淡海
本作には続編もあって、次の舞台は淡水。

LRTからなんだけど、住むならこの辺りの方が住環境はいいと思うし、建物も新しくて住み心地も良さげよ?
ただ…あの呉誠が住むなら、淡江大学や淡江中高の周辺かな??と思う。