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灰色の基隆 [2015年11月・12月 台湾女一人旅]

灰色の街

野柳のバス停から基隆行きのバス790番に乗った。
⇒台北から野柳地質公園への行き方・帰り方
野柳 基隆

さっき行きに通った道を通り、そのうち見たことのない景色が見えてくる。なんとなく「温泉街」と言いたくなる雰囲気だ。歩いていれば狐狸にでも騙されたのかもしれないと思うかもしれない。

人がおり始めた。

Google Mapsで見ると、基隆駅はもう目と鼻の先だ。

荷物があるわけでなし、先を急ぐでなし。多くの人が降り始めたところで、私も野柳から乗ったバスを降りた。

基隆 ここで降りた

なぜだろうか。昼過ぎだというのに、基隆は暗く灰色だ。

台北は緑地に白文字、白地に緑文字というような看板のイメージを持っている。それが、ここは赤だ。違う文化圏なのだろう。

基隆 赤

少しお腹が空いていたので、何か食べたかったのに、入る気になれない。

あと、食べ物は海鮮が多い感じだというのもある。私は海鮮が食べられない。

基隆 駅前商店街

もう一つは、天気のせいだろう。雨が降るのか、降らないのか。私は晴れ女で、天候に恵まれがちだ。それでも、全く濡れないわけではない。

「暴力的」な街

ふと思い出したのは北九州市は小倉だ。

小倉駅のモノレール側から出ると魚町商店街だ。正確に言うと、雑居ビルが並び、その奥、どの筋が魚町商店街だ。おそらく、小倉はあの街の規模でまだ商店街が生き残っている数少ない都市の一つだろう。あれより大きいのは、仙台だろうか。それでも大きな通り、線だったように思う。小倉は、面だ。そして、決して綺麗ではない。特に魚町商店街から馬借に行けばいい。そこにはアジアが広がっている。

微かに漂う気配は、まさしく小倉だ。

小倉。そこは駅前にパイナップルそっくりのものが置かれていたところだ。もちろん、「レオン」でジャン・レノが爆発させるアレである。
レオン 完全版 [Blu-ray]

もしも日本国内でロケットランチャーが欲しいなら、北九州に行くといい。買えるかもしれない。実際に押収されている。

小倉。そこは・・・。まさしく、暴力都市であり、決して気を抜いてはいけないところだ。小倉の魅力とは、そういう何かありそうなところにつきる。

ただし、昼間に限る。

基隆。決してそこには魚町商店街のような何か怪しげなところではない。(魚町商店街のために言うが、いかがわしい場所では決してない。普通にシダックスとか飲食店とかがあるだけである。雰囲気がとても「よろしい」のである。)

ただただ、ごちゃごちゃと店が軒を連ね、ところどころにシャッターが降りる、そんなところだ。その空気がまさしく、小倉だ。多少怯えつつも、わくわくしながら歩いた。

「俺だって怖いんだ」

治安が決して良くなかったであろう80年代の香港映画で、こんなセリフがあった。

「いいか、台湾だぞ。俺だって台湾ヤクザは怖いんだ」

言うのはチョウ・ユンファだ。映画は「男たちの挽歌」。まさしく、ドンパチやりまくる映画だ。

兄貴が警官になった弟のために引退を決意して最後の仕事で台湾へ行き、そこではめられる。その直前のセリフだ。お前が言うかよ、凄腕ヒットマンよ?

実は、台北に通うようになったのはここ数年のことなので、あのセリフに実感がない。

今の台北はどんどんおしゃれになってきた。そして治安は良い。黒社会といえば、香港だ。映画のせいもあるが、街を歩けばわかる。香港と台北であれば、明らかに香港の方がヤバい筋としか思えない人たちを多く見る。

なんとなくわかる。

「いいか、北九州だぞ。俺だって怖いんだ」と香港ヤクザがいうなら、なんかわかる。
ほぼ同じ文脈で、
「いいか、基隆だぞ。俺だって怖いんだ」

わかる!

基隆の名誉のために言っておくが、なんの犯罪にも巻き込まれてはいない。街の雰囲気の話をしているだけで、私の想像力が暴走しすぎているだけである。

多分この天気のせいだ。あと、野柳で人に瘴ってしまった。

「ヤバい台湾」は残っているのだろうか

台北は、ビルの軒下が歩道になっていて、アーケード状になっている。基隆はというと、大通りの両脇にあるような、商店街のアーケードを連想した。実際には、ビルの軒下のようなものなのだろうけれど。

高雄は道によっては同様に歩道になっているのだが、大変歩きにくい。

基隆は、もっと歩きにくかった。

基隆はほんの少ししか歩いていない。それでも、台湾人にとって台北という都市が特別なのがわかるような気がする。

台北は脱皮しつつある蝶だ。中華圏において、流行の最先端は香港であったようだ。しかし、その優位性は、もはや台北に対してはない。香港がいつまでたっても垢抜けなかったのに対して、行くたびに台北はおしゃれになっていく。私の感性が台北化したのだろうか。

それは今の台北だ。「挽歌」の時代の台北はそうではないのだろう。

そして、台湾全体は?台北が日本的におしゃれであるとすれば、台湾全体はそうともいえないだろう。

台南は街をろくに歩いていない。
高雄はのんびりとしていて、これまた独特だ。新北はあまりよくわからない。

ごちゃごちゃと灰色、それが私の中の基隆の色になった。おそらく、「挽歌」で言われるような「ヤバい台湾」はまだこういうところに残っているのだろうか。

基隆は変わる

そんなことを思いながら、基隆駅前につくと、バス停があった。

基隆 バス停

台北に行くのだろうか。それより目立つのが瑞芳だ。平渓線とか、九份とか、ここからバスでも行けるのではないか。

野柳が想定していた以上に人が多く、私は疲れていた。都市の人の多さと観光地の人の多さでは疲れ方が違う。

ああ、台北に戻りたい。

歩道橋を渡る。そういう決して歩きやすいわけではないところもまさしく日本の田舎都市的である。海が近いところとか、ふと大昔の下関駅を思い出した。

歩道橋から見えれば、まるで海峡ゆめタワーではないか。

基隆 海峡ゆめタワー?

そうか。ここは90年代半ばに人工地盤になるまえの下関駅前だろうか。

その下関駅も車を突っ込んで人を殺したヤツがいたり、放火をして全焼させたりしたヤツがいて、事実として暴力地区である。仕方がない。目の前は北九州なのだ。

基隆で思い出すのはとにかく、そういうことばかりであった。

基隆の名誉のために言っておくが、多分天気のせいだ。

基隆駅についた。

基隆 駅

バスはここの前にも乗り付けていて、おそらくあのバスにそのまま乗っていたらここに到着したのではないだろうか。「ここ、まるで下関やね」で終わってしまう。ごくわずかの時間だが、あそこで降りて、わくわくできて大変良かった。

次に来た台北行きの列車が、区間車であろうが特急(自強号)だろうが、なんでも良かった。とにかく、乗ろう。台鉄はヨーヨーカーで乗るなら安く乗せてくれるのは前回の高雄ー台南往復で学習済みである。

指示に従い、歩いていく。

基隆 南駅

高雄駅も台南駅も確か「北站」「南站」という表示があった。いや、高雄は「前」「後」だっただろうか。それは決して高雄前とか台南北という駅があるわけではない。あれは日本語で言えば「北口」「南口」ということだろう。基隆もそのようになっているようだ。It’s a cultural difference.

駅の正面のように見えたところは、「北口」で、乗る場所は「南口」側にあると考えれば良い。

基隆 閉鎖された駅舎

ちらりと見ると、さっききた「北站」のホームが廃墟になっていた。南站はいわばプレハブだ。これから北站を崩して立て直すのだろうか。高雄駅同様、ここも次に行ったら大幅に変わっているのだろう。

将来の基隆駅のイメージ図があった。きれいに、清潔なビルだ。さぞ便利になるだろう。ただ、「個性的」という名前の没個性である。

灰色の基隆は、次に行けば何色になっているのだろうか。

私は売店で駅弁を買い、次に来る台北方面の列車に乗り込んだ。

台鉄新竹行き

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